看護師の異動(精神科→整形外科)わたしの実体験

映えない暮らし

新卒1年目は、精神科の閉鎖病棟配属でした。

精神科救急加算もとっている病棟で、約40床のうち20床が保護室、身体拘束中の患者様もおられる病棟でした。とても特殊な科から看護師をスタート。

そこで3年間経験を積んだ後、整形外科へ異動になりました。

よく精神科にいるとフィジカルアセスメントや医療行為が出来なくなるという話を看護師界隈では聞きますが、わたしはまさにそれで異動時苦しみました。

とくに異動となった整形外科では手術前後のケアがメインの看護となるため、手術なんて一切なかった精神科から来たわたしは完全に邪魔者扱いでした。

3年目のくせにこんなことも出来ない、段取りが悪い、遅い…

悪口、嫌味はたくさん言われました。

精神科で患者さんと過ごす1日と、整形外科で患者さんと過ごす1日は、全く違いました。精神科では患者さんの精神状態を日々アセスメント、1日の生活をより安定して暮らせるように援助していました。

ところが整形外科では、決められた時間までに手術出しの準備、オペ室から電話がかかってきたらすぐに迎えに行き、術後の経過を観察。手術の翌日は離床に向けた関わり、疼痛コントロール、緊急入院や緊急手術が必要な患者さんの対応…。

そして入院したと思ったら翌日退院…。平均在院日数90日だった精神科と比べ、回転率も比較にならないほど早かったです。

朝出勤してから夕方帰る頃までずっと処置やケアに追われていました。

精神科と整形外科では時間経過が全く異なりました。嫌味を言って来られた先輩方にはそれがわかるはずもなく、「この看護師は使えない」「一緒に夜勤をしたら大変」というレッテルを貼られていました。

実際、最初の1か月は仕事に全くついていけず、帰りの車の中で毎日泣いていました。守ってくれる上司も1人もいませんでした。

当時ついてもらっていたプリセプターに相談しましたが、そのプリセプターが面談と称したお話は、2時間のお説教混じりの激励の言葉でした。(今思うとかなりずれていた、そしてわたしにとっては暴言でしかなかった。)

それでも、負けたくなかった。一番はわたしが好きだった精神科領域をバカにしてきた先輩がいたこと。

「精神科なんてわたしには無理、あそこは出来ない看護師がいくところ。」

その言葉を聞いて、精神科でお世話になった先輩方の顔が一番に浮かびました。20年近く精神科に従事している先輩は誰よりもフィジカルアセスメントを勉強されていましたし、誰よりも観察力に長けていて、尊敬出来る先輩がたくさんいました。

精神科の経験もないあなたに何がわかるんだ、決めつけるあなたこそ人として未熟だ。と心の中で思っていました。

この人に勝つためにはわたしが仕事を覚えなければ…と怒り・悔しさとともに闘志を燃やしました。

そこからはあまり記憶もありませんが、ただがむしゃらに仕事を覚え、勉強しました。

わたしが具体的に行動した内容についてメモしておきます。

①解剖学を学び直すこと

精神科でも知らない疾患に当たると参考書を開いていましたが、急性期ではスピード感が違います。

異動になった当初は寝不足になりながら参考書を開いていました。明日、手術予定のある疾患の勉強を前日夜に行い(インプット)、翌日の業務で実践(アウトプット)。

この作業を日々行っていても緊急入院、緊急手術が毎日のようにあったため、正直想像通りにはいきませんでした。しかし回数を重ねるごとにイレギュラーな事象に慣れてきていつの間にかこなせるように。

勉強したことはインプットとアウトプットの繰り返しで体に染み付き、疾患の理解も深まりました。

②多重課題に慣れること

精神科では段取りをある程度組めばほとんど計画通りにケアを進めることが出来ました。しかし急性期では突発的な手術、入院が多く計画通りにはいかないことが多かったです。

そのため計画通りにはいかないということを前提に、いつ入院・手術が入っても進められる計画を毎朝頭の中で立てておきました。

③少し早めに出勤して情報収集し、今日のすることリストをメモ書きで書いておくこと

電子カルテのワークシートを見れば今日することがなんとなく理解できますが、慣れるまではやはり1つずつメモして実施したことは1つずつ消していくという作業が必要でした。でもこれをすることで頭の中が整理出来てとても助かりました。

そして3か月も経つと、することリストのメモは不要になり、頭の中で必要なことがすぐに浮かぶようになりました。その後は突発的に何か処置等が入った時や絶対外せない重要事項のみ、メモを活用しました。

少し早めに出勤というのが最初は辛かったですが、慣れてくると5分前の出勤でも業務をまわせるようになりました。最初の数か月だけの辛抱と思い、わたしはこのような行動をしました。

そして半年くらい経つ頃には業務に慣れ、何も言われなくなりました。1年後には「天使のような看護師さん」と言って頂けるようになりました。

精神科で学んだメンタルケアを生かしつつ、整形外科のスピード感も掴み、悪口を言っていた先輩方を黙らせることに成功しました。

精神科をバカにしてきていた先輩も、わたしに認知症の対応など相談して来るようになりました👏

辛かったこの経験は今でもわたしの人生に生かされています。

精神科では医療行為は確かに少なかったです。手術もありませんでした。しかし、精神的なケアはどこの科に行っても必要とされていて、患者さんばかりでなくスタッフ同士のコミュニケーションでも生かすことが出来ます。

そして精神科の患者さんの家族背景、壮絶な生い立ち、その全体像を掴みケアに当たる早さは精神科看護師ならではだと思います。

人間観察も得意な看護師が多く、小さな変化も見逃さずに配慮してくれるスタッフも多かったです。

正直、精神科という深い領域をバカにする方こそ、浅はかで短絡的だと思います。

こんなに深く学びのある科に早々に当たることが出来て本当に良かったと今でも思っています。

現在は諸事情により精神科以外のところで勤務していますが、近々また精神科、心療内科に勤めたいと思っています。

これからもし、精神科から一般科に異動される看護師さんがいたら、ぜひ頑張ってほしいです✨

たしかに特殊な精神科から一般科に異動することは容易ではありませんでした。

しかし、一般科で学んだ知識は今でもわたしの看護師生活の支えになっています。

スピード感を持って処置や検査をすすめること、臨機応変に対応すること。これらはやはり一般科で何度も繰り返し実施し、自分の血となり肉となりました。

ただ、精神科→一般科のルートをたどったわたしが思うに、可能なら5年くらいは一般科で知識・技術を磨いてから精神科にいく方が安心ではあると思います。

でも逆のパターンでも努力すれば大丈夫です。失敗もたくさんするかもしれないけど、学ぶ姿勢を忘れなければ、一般科の業務も出来るようになりますよ。

精神科で学んだメンタルケアやアセスメントはどこの領域でも重宝されます。引き続き精神科の勉強を深めていきます。

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